ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
ハスキー
「早かったな」
「約束の時間に遅れるのは 好きじゃないから」
「へぇ~、変わったな。
あの頃は 時間通りに来たことなかったのに…」
――あの頃は…だと?
蒸し返すようなことをよく平気な顔で言えるもんだ。
怒りを通り越して、感心すら覚える。
この前キスしたからといって、過去が清算されたわけじゃない。
あれはしたんじゃなくて、無理矢理奪われただけだ。
やっぱり、男は単純だ。
まさかとは思うが、すんなり復縁できる腹でいるんじゃないだろうか?
「そんなことより、話って何?
時間、そんなにないんだけど…」
「あ、ああ、そうか。
でも、昨日はビックリしたよ。
まさか、あの場で沙希とまた会うとは
思ってなかったからな」
沙希の素っ気ない態度に、慌ててハスキーが話を切り替えた。
「驚いたのはこっち。
勇次は若干でも可能性は感じてたでしょ?」
「まぁ、ほんのちょっとは…な。
でも、まさかお前が
鷲尾の担当任されるほどの
ポジションだとは思ってないし…」
――鷲尾会長ってそんなに大物なの?
「まあね。 でも、たまたまよ。
そういう勇次だって、
それなりの役になってるってことでしょ?」
敢えて否定はしなかった。
昨日今日転部したばかりだと言うよりは、探りができると思ったからだ。