ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「脅かすつもりはないけど、
鷲尾には気をつけた方がいい。
というか、
鷲尾の女癖には気をつけた方がいい…
と言うほうが正しいか」
「どういうこと?」
「お前、知らないのか?」
やっぱりという顔でハスキーが呆れながら、話を続けた。
「あいつの女癖が悪いのは
業界では有名なんだよ。
俺が担当する前は、 うちも前任は女性だったんだ。。 だけど、 急に田舎に帰るって会社を辞めてさ。
寿退社だの病気になっただのって
社内ではいろんな噂が飛び交ったけど、
俺は鷲尾が関係してると思ってるんだ。
証拠はないんだけどな。
でも、とにかく、あいつは女癖が悪い」
「大和部長は そんなこと言ってなかったけどね」
「そんなこと言わないだろ、普通。
それに 鷲尾の悪行は表沙汰にはなってない。
昨日、鷲尾の横に一人いただろ。
鮫島。
あいつが全て裏で揉み消してるはずだ。
俺らはスイーパー(掃除屋)って呼んでる」
―ドーベルマンのことか
昨日の彼の冷徹な目つきを思い出すと、背筋が寒くなった。
「でも、気をつけろって言われても…
じゃ、どうすればいいってこと?」
「絶対に一人では接触しないほうがいい。
鷲尾に会うなら、
大和さんと一緒に会うべきだ」
ハスキーの切実な眼差しに事の重大さを感じた。
たしかに、土佐犬の横柄さ加減はモラルなど微塵も感じない。
「わかった。そうする」
「それにしても、大和さんもよりによって
沙希を担当にするとはな。
あの人こそ、
それで辛い思いをしたはずなのに…」
「大和部長が?」
「知らないのか?
あの人、 自分の恋人に手を出されたんだからな。
」