ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間



「何それ?」  


「大和さん、
前に結婚まで考えた人がいたんだ。
でも、鷲尾に手を出されて破談になった。
口には出さなかったけど、
相当辛い思いをしたんじゃないかな」  


あの晩の土佐犬とシェパードの問答が鮮明に甦った。  

『まさか、お前のこれじゃないだろうな?』  

『だとしたら、鷲尾会長には会わせませんよ』  


あの時の意味深な言葉の裏にはそういう駆け引きがあったのか。
土佐犬の暴君ぶりに背筋が寒くなりつつ、矛先はシェパードに向いた。  


「ひどい…
でも、よくそんなことされて
今も顔合わせれてられるわね」   


「そりゃ、部長職だからな。
ビジネスはビジネスで割り切らないと」  


「それもヒドい…
じゃ、私も 女だから担当になったの?
ビジネスの道具にされるってこと?」  


「いや、そう決め付けるのはまだ早いけどさ。
でも、女とはいえ社員は会社の駒だからな。
大和さんの采配がお前を道具とするなら
仕方ないんじゃないか?
まあでも、 大和さんの真意はわからないけど…。
だけど、沙希が担当になって
指咥えて観てるだけってのも
俺はしたくなかったし…。
忠告だけはしておこうと思ってさ」  


返す言葉が見つからなかった。
ハスキーの忠告へのお礼よりも、シェパードへの疑念が湧いた。

やはり食えない男だ。

私を担当にしたのは酒豪でもなく、負けず嫌いでもなく、女だからかもしれない。


 
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