ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
それにしても、ハスキーは何故ここまでシェパードの過去を知ってるんだろうか?
大和さんって親しみのある呼び方もさっきから気にはなっていた。
「勇次は大和部長とはどういう関係なの?
何でいろんなこと知ってるの?
単なる競合会社の間柄にも思えないけど…」
「大和さんとは、
競合他社の付き合いだけじゃないんだ。
知り合ってから、もう4年になるよ。
出会ったのは、
フィットネスクラブに通い始めた頃でさ。
お互いの立場がわかってからは、
仕事の話はご法度にしてるけどな。
でも、ウマが合うっていうか
お互いに気が合ったんだ」
――シェパードとハスキーが知り合い?
――ってことは繋がってたのはこの二人?
「仕事の事は本当に話してないの?」
「いや、そんなことはしないよ。
お互いの企業秘密をリークすることになるからな。
単にその時々の経済問題について話すくらいさ」
「ふ~ん、そうなんだ。」
あろうことか、シェパードとハスキーも繋がっていた。
こう何度も奇遇が重なると、驚くよりも笑えてくる。
「で、その鷲尾会長の事件っていつ頃の話なの?
その彼女さんは、今どうしてるの?」
「あれは…2年くらい前
…だったんじゃないかな。
彼女さんがどうしてるかは俺は知らない。
ただそれから、大和さん変わったんだ。
妙にクールになったというか、
割り切った意見が多くなった気がする。
まぁ、その時期に部長に昇進したから
役職の違いで意識も変わっただろうけどね」
「へぇ、そうなんだ。
それで女性関係も
クールになっちゃったのかな?」
「いや、それはわからないけど」
ハスキーの眉間に皺が寄る。
「どうして?」
「え、あ、いや
プライベート見せない人だし…
それに、この前妹さんが嘆いていたから。」
「沙希、お前まさか」
ハッとしたハスキーが言葉を詰まらせながら訊いた。
「大和さんと付き合ってるのか?」
「それは勇次に関係ないでしょ?」
否定も肯定もしなかった。
悪戯心でもなかったが、直感で思わせぶりなセリフが口を出た。
「関係あるさ」
「何の関係?」
「それは……」
ハスキーの歯切れが悪い。
「俺と……お前のことだよ」