ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
陽子
ハチとの電話が終わり、ランチに向かおうとしたら、今度は陽子からラインが入った。
《ランチ、一緒に行ける?》
陽子とは会社も近く、時々こんな感じでランチに誘い誘われる仲だ。
店は決まっている。
短い時間で探す手間も勿体ないし、お互いの会社の人に会わない店を二人で決めていた。
まぁ、自分もそうだが、何か有事でなければ友達をわざわざ誘うこともない。
何かあったんだろうと思いながら、《OK》とだけ返し、お決まりの店へと向かった。
店に入ると陽子はすでに席についており、奥の席で手を振っている。
「ごめ~ん、大丈夫だった?」
「ううん、全然平気だよ。
ちょうどランチに行くとこだったし
で、何かあったの?」
お互い時間は限られている。
席について早々にオーダーを済ますと、呼び出した理由を訊いた。
「この前の合コンでさぁ、
勇次君っていたじゃない?
私さぁ、勇次くんが
ガチでストライクなのよ。
でさぁ、勇次君の番号聞いて
ラインとか電話してるんだけど、
イマイチ乗ってこないんだよね。
沙希さぁ、2次会行く途中で
勇次君と二人きりでいたじゃん?
ひょっとして、沙希繋がってる?」
陽子はサバサバしている性格で、他人は聞きづらいことでも気にせず聴いてくるし、こと自分のことに関しては躊躇という言葉はない。
そうしたパリッとした性格が好きなところでもあるのだが、この質問は少し困った質問だった。
元カレと正直に伝えたところで、陽子は疑念を抱くかもしれない。
何であの場で言わなかったの?と。
かといって、黙っていて後で発覚したとしたら、陽子は面白くないだろう。
「う~ん」と悩んだ挙句、正直に伝えることにした。
「実はね、勇次君って 私の元カレなの」