ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「え!?ウソ?マジ?」
店中に聞こえる声で陽子は驚き、そして案の定、沙希を責めた。
「何で黙ってたのよぉ」
「や、あの場で言ったところで
なんかシラケそうじゃない。
場の空気考えたら、言えなくて…」
「でもさぁ…」
と納得がいかない陽子だったが、すぐに頭を切り替えたようだ。
「で、いつの?」
サークルの仲良し4人組とはいえ、彼女達が私の全てをしっているわけではなかった。
地元のことは話してないし、ハスキーとのことは初めての彼氏という恥じらいもあって、彼女達に会わせたことはなかった。
「大学時代に付き合ってた」
「あ、あ~ 会わせてよって言っても
沙希が頑なに拒んだあのカレね」
「そう、あのカレ」
「そうなんだぁ。
あれ?…でもあの時って…
たしか……」
陽子が過去の記憶を辿るようにパズルのピースをハメていく。
向こうから答えを言われる前にこちらから最後のピースを埋めた。
「そう。 私を捨てて他の女を選んだカレ」
ハスキー本人を知らなくても、事の顛末は陽子は知っている。
泣きじゃくって情緒不安定になった私を慰め励ましてくれたのは、誰あろうこの陽子だからだ。