ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
相談してみてよかったと陽子に伝えると、
「沙希はおっとりしたとこあるからね。
いい?
絶対に油断しちゃダメよ。
好きだから一緒にいるんじゃなくて
一緒にいるから好きになるってことも
あるんだから。
しかも、手強い子猫なんでしょ?
何かあったら、すぐに連絡してね。
子猫撃退法なら、私に任せてちょうだい」
鼻を高くした陽子が得意満面に言う。
事情も相まって話に夢中になっていたが、時計を見るともうすぐ1時になろうとしていた。
「陽子、ありがと」
席を立とうとすると、別れ際に陽子がもじもじしながら訊く。
「ねぇ、ところで
沙希は勇次君のことは
もう何もない…んだよね?」
「うん。 何もないよ」
一昨日のキスと昨晩会ったことが一瞬脳裏を掠めたが、敢えて陽子には伝えなかった。
ハスキーとは終わってるし、今後復縁することは絶対にないと確信が持てたからだ。
「じゃ、1匹に絞ってみようかな」
頬を赤らめた陽子が照れくさそうにいう。
彼女のアドバイスを素直に聞いた私に触発されたのか、陽子も受け入れたようだ。
ただ相手が相手だけに、もう一言だけ付け加えておく。
「頑張って。でも、彼こそ要警戒だよ。」
と笑顔で伝えると、陽子も笑顔で頷き、お互いの会社へと向かった。