ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
突然の沙希の言葉にシェパードは小首を傾げながら
「20号のほうが早そうだけど
でも、そうしたいって言うなら
別に全然問題はないよ」
というと、タクシーの運転手に経路の変更を告げた。
タクシーの運転手は「今の時間、混んでますよ」と面倒がって忠告しながらも、言われた通りにハンドルを切った。
さっきの大手雑貨チェーンの歌舞伎町店は靖国通り沿いにある。
一緒にいるのか、いたとしてもまだいるのか確証も何もなかったが、沙希の心に広がった不安が車を向かわせた。
何もありませんようにと願う沙希にシェパードが話しかける。
気遣ってか、口調は穏やかだった。
「もう、 少しは落ち着いたかな?」
「はい。大丈夫です」
「なら、よかった。
でも、 今日みたいなことは
絶対に報告するように、な」
シェパードはホッとしたような口ぶりの後、怒りたいのに怒れないといった歯がゆさを含んだ説教をした。
「すみませんでした。 気をつけます。」
沙希は申し訳なさそうに謝ると同時に、ある疑問が湧いた。