ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
――何で、シェパードは助けにきてくれたんだろう?
――私が菊水にいることをどうやって知ったんだろうか?
「あの… 部長は何でわかったんですか?
私があそこにいるって…」
駆け引きもできただろうが、沙希は思ったままを訊いた。
「誰かわからないけど、
匿名で連絡があったんだよ。
君が会社にいるか?ってね。
いなければ、ひょっとしたら、
菊水にいるかもしれないって」
――匿名の電話?
――誰が?
「誰かわからないけど、
何でそんな連絡をくれたんですか?」
「わからない。
俺が電話を取ってはないからね。
でも、その電話には感謝しなくちゃな。
君に電話しても出ないし…
心配になって菊水に向かった。
結果、大事には至らなかった。
あの電話がなかったら…
でなきゃ、今頃…」
そう言いかけて、シェパードは口をつぐんだ。
さっきの件を蒸し返したところで、私が怯えるだけだと思ったのだろう。
代わりに、沙希がその先を続けた。
「私、どこに…
連れてかれようと
してたんですかね?」
「さぁ、それはわからない。
にしても鮫島の奴…
一体、何考えてんだ」
とシェパードにしては珍しく語気を荒げた。
憤りが収まらないのか、シェパードは語調を変えずに沙希に訊く。
「で、鷲尾は何を言ってきた?」