エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「うんうん。心機一転っていうか……新しい仕事を任されて、気合入れたっていうか」
「そうだったんだ」


彼女は商社で食品の輸入に関する仕事をしている。


「うん。砂羽が頑張ってるのを見て、私も頑張りたくなったんだよ」


奈央は、父が亡くなってから私のことをいつも気にかけてくれている。
母にも言えない胸の内を聞いてもらったこともあり、心強い味方だ。


「そっか。けど、私なんてまだまだだよ」


ちっともうまくいかない仕事を思うと、そう言われてしまうのはきまりが悪い。


「だって砂羽はさ、どう考えたって営業に向いてないのに踏ん張ってるでしょ?」


彼女はクスクス笑いだす。


「なによ、失礼ね」


と言いつつ、私も噴き出してしまった。
昔からどちらかというと引っ込み思案で、奈央に引っ張ってもらってばかりだったのを思いだしたからだ。

父が病気で突然逝ってしまい、苦手だなんて言ってはいられなくなった。

だけど、慣れない営業の先頭に立っているのは、私の意志でもある。
大好きな会社を、そして伝統を守りたいという、私の。
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