エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
過ちと海容
翌週は、稲田さんとの交渉で相変わらずチクチク嫌味を言われたものの、翔さんとのデートを思えば、ちっとも苦ではなかった。

しかも、我が社がブランピュールに生地を卸していることが広まってきて、徐々に他社からの受注が増えてきた。

そのため、一旦止めていた機械も動かし始めている。

峰岸の未来がつながったと、母や橋さんはホッとしたような顔を見せていた。
もちろん、私も。


お茶会の日曜は、朝から着物を準備した。
あのパーティのときのものとは違う、これもまた祖母の時代から受け継いできた一品。

お茶会なのであまり派手なものではなく、淡い若葉色の色無地だ。

しかし帯は、橋さんが数年前、お茶会に行く私のために心を込めて作ってくれた、桔梗があしらわれている新しい名古屋帯。

いつだったか翔さんが『温故知新』と言っていたけど、古きものも新しきものも、どちらもその技術は一流で、ふたつ合わさるとまさに峰岸織物の歴史を表しているような気がする。
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