エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「俺は相当厳しくしてきたつもりだよ?」
「そうですね。仕事では鬼でした。何回泣いたことか……。でも、透けて見えるんですよ、優しさが」


稲田さんの声が明るくなってきた。


「本当に申し訳ありませんでした」
「あぁ」
「失礼します」


そんな会話のあと、すぐにドアがバタンと閉まった。


「砂羽」


呆然としていると、翔さんがリビングに戻ってきた。


「俺、甘いのかな」


結局、稲田さんを許したのだから、甘いと言えば甘いかもしれない。
だけど私は、首を振った。

すると彼は立ち尽くしていた私の手を取り、ソファに誘導してくれる。


「聞こえてたよな」
「はい」


正直に答えると、彼は再び口を開く。


「彼女に告白されたのは、砂羽に心が動いている自分に気がついた直後だった。彼女は優れた観察眼を待っているから、もしかしたらそれを感じたのかもしれないな。もちろん、邪な気持ちではなく、技術の高さに感心して峰岸織物を採用したが……あの手紙は捨てずにとってあるから」
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