エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「坂井さん、わざわざありがとうございます。私……ちゃんと翔さんとお話してみます」


このまま逃げられない。
だって私の心は、翔さんに囚われてしまっているんだもの。


「はい。ありがとうございます。翔さんには幸せになっていただきたいんです。どうか、お願いします」


私たちはそこで別れた。

今日は翔さんのマンションに帰ろう。
話さなければ始まらない。

そんな決意を胸に会社に戻ると……。


「砂羽」
「翔、さん……」


翔さんが会社の前に立っていたので目を瞠る。


「どう、したんですか?」


さっき話そうと決意したばかりなのに、不意打ちで来られてしまうとなにを言ったらいいのかわからない。
うつむき加減でそう口にすると、彼は私に近づいてきた。


「朝から会議ばかりで、一時間しか空かなかった。それでも、どうしても砂羽に会いたかった」


『空かなかった』ということは、なんとか時間を捻出したということだろうか。
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