エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
しかも一時間って……。
ブランピュールとここを往復したら、それだけで四、五十分はかかるのに。


「兄貴のこと、黙っててごめん。でも、兄貴とはビジネス上ではなんの関係もない。だけど、砂羽がイヤな思いをしたのは事実だ。砂羽がもう俺の顔なんて見たくないというのなら……」


彼はそこで言葉を止めてしまう。

『見たくない』なら、なに? 別れる、の?

勝手に顔がゆがんでしまう。

私は……あなたのそばにいたいのに。
誤解なら、なおさら——。

そんなことを思っていると、彼はスーッと大きく息を吸い込んでから、再び口を開いた。


「ダメだ。それでもあきらめられない。砂羽しかいらないんだ」
「翔さん……」


顔を上げると、彼の真剣な眼差しとぶつかる。


「たとえブランピュールを失っても、砂羽が欲しい」
「そんな……」


ブランピュールは彼が並々ならぬ努力で大きくした会社なのに。
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