エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「私、の……」


彼にはたくさんの洋服をもらっている。どれのことだろう。


「薄いピンクのワンピース、もらってませんか?」
「えっ……」


ピンクのって、アルカンシエルで行われたパーティで倒れたとき、『試作品』だと家から持ってきたくれたワンピースのこと? 

すでにそのとき、私を意識してくれていたの? 

だけど、それまでに実際に会ったのは、サンプルを無理やり渡した数分と、La mer TOKYO前で声をかけたほんのわずかな間だけだよ?

信じられないような事実を知り、胸がいっぱいになる。
試作品なんかじゃないじゃない。


「てっきりお付き合いされてるんだと私は思ってたんですけど、主人が昔ながらの手紙つながりの片思いだからって笑ってて……」


八坂さんはなにかを思い出すように笑みを漏らす。


「手紙……」


あの手紙は私の一方的な、しかも仕事の話ばかりで、好きになってもらえる要素なんてどこにあったのかわからない。
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