エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「準備が整ったんだけど、行ける?」
「はい」


私は翔さんが差し出した手を取り、立ち上がった。

誰かに教えられたわけではないが、和服を纏うと気持ちが整っていき、自然と歩き方もいつもと違ってくる。

翔さんは『着物を身に付けるときの表情がいつもと全然違ってる』なんて言っていたけど、もしかしたら本当なのかも。

ゆっくりゆっくり歩みを進め、別の階の宴会場のドアの前に到着すると、もう中からは司会者の声が聞こえてきて緊張を隠せない。


「先にドレスからいく。そのあと砂羽だ」
「はい」


彼は私の手を握り離そうとしない。

会場を目の前にしてまともに息も吸えなくなった私に気づいているのだ。


隣に立っているウエディングドレスとカラードレスをそれぞれ纏ったふたりのモデルは、私より背が十センチ近く高く、もちろんスタイル抜群だ。

翔さんのデザインの大きな特徴であるウエストのラインの美しさを十分に見てもらえるような。
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