エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
その隣が、ごくごく普通の私。気後れするに決まっている。

でも、着物は日本の伝統文化だ。
日本人らしい体型でもきっと大丈夫。

そう自分に言い聞かせる。


「翔さんは行かなくてもいいんですか?」
「あぁ。広報に任せてある。俺の部下は優秀なんだ」


そっか。私が橋さんたち職人さんを信じているのと同じだ。


それからすぐにドレスのふたりが足取り軽く入場していく。

そのとき、中の様子がチラリと見えて、顔が引きつった。
想像をはるかに超えるカメラが並んでいたからだ。


「すごい人……」


思わず声を漏らすと、翔さんがクスッと笑う。


「大丈夫。砂羽は峰岸織物のことになると途端にスイッチが入るから」


そうは言うが、どうしたって顔が険しくなる。

翔さんは社長としてマスコミにもよく登場しているから慣れているだろうけど、私は初めてなんだもの。


外まで聞こえてくるすさまじいシャッター音に気圧されながらも、深呼吸しながらマイクを通して聞こえてくる話に耳を傾ける。
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