エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「ブランピュールでは、今後和装の分野にも積極的に進出してまいります。しかしながらその技術はまだまだ未熟で、こちらは傘下の峰岸織物が制作した大変貴重な白無垢になります」


広報の人が読み上げているのは、翔さんが考えてくれた原稿だ。
私はひと言も漏らさぬようにと、耳を傾けていた。


「峰岸織物は、創業百三年の老舗繊維メーカーです。ひたすら職人が技術を磨き、そして伝え、昔から変わらぬ高い品質を保ち続けています。弊社のような新しい会社は学ぶところばかりで、今回和装を手掛けるにあたり指導を仰ぐことを即決いたしました。今後、古きよき伝統とブランピュールの新しい息吹とを融合させ、新たな日本の文化を作っていくことができればと思っております」


まさか、こんなに詳しく峰岸織物について触れてくれるとは思っていなかった。

それに……翔さんの原稿には、職人さんへのリスペクトの気持ちが込められていて、胸にこみ上げてくるものがある。
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