エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「あっ、これ……うちのだ」
「うん。これって、赤もあるよね?」
「はい。赤と、深い緑があります」


他の色が欲しければ受注生産も可能だ。


「これに惚れたんだよ。柔らかいのに張りは保てる。魔法のような生地だ」


『魔法』というほどではないけれど、我が社の商品を褒めてもらえてくすぐったい。


「この生地を使ってデザインを、と思ってたんだけど、複雑にすればするほどしっくりこなくて。で、とてつもなくシンプルにして生地のよさに頼りきった商品も悪くないんじゃないかと思ったら、これが描けた」


彼はデザイン画を掲げて目を細める。


「オリジナリティにこだわりすぎて、素材のよさを生かすのもデザイナーだということを忘れていたよ。生地を生かせば十分にオリジナリティを表現できるのにな」


そうは言うが、タックの数とか幅とか……ここまで細かく指定しているということは、彼独特のデザインなはずだ。

普通はここまで指定せず、パタンナーに任せてしまうと聞いたことがあるから。
< 326 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop