エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「お電話で何度もお断りしたはずです。こういうのは迷惑です」
「申し訳ありません。ですが、一度弊社の商品をデザイナーさんに見ていただけないでしょうか? 必ずや気に入っていただけるかと」


デザイナーの中には、布の張りを生かしたデザインをしたり、その色や柄からインスピレーションが湧く人もいる。


「こちらの織りは——」


サンプルをテーブルに出したものの、稲田さんは立ち上がってしまった。


「会議がございますので、これで失礼します」


稲田さんは私の話を聞くことなく、戻っていってしまった。


「はー」


こんなとき、優秀な営業マンだったらどうするんだろう。

このまま仕事が取れなければ、峰岸織物の行く末は暗い。
だけど、どうしても伝統は守りたい。


ここ、ブランピュールは主に女性用の洋服を手掛けている。

女性を美しく見せることに心を砕いたデザインが多いが、ちょっとばかり値が張る。

だから私のような普通のOLにはなかなか手が出せないが、ファッション誌にこぞって取り上げられるし、芸能人にもファンが多い。

そして、その人たちに憧れる二十代くらいの女性が、いつか手にしたいと目標にし、お金を貯めて買い求めるようなブランドなのだ。
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