エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「峰岸さん?」
「ぶしつけなお願いだとわかっております。どうか我が社に融資していただけないでしょうか?」
「稲田。席をはずせ」
「はい」


私が頭を下げ続けていると、そんな会話が聞こえてきて、稲田さんが部屋を出ていく音がした。


「峰岸さん。顔を上げて」


それからすぐに一ノ瀬さんが私のところに歩み寄り、肩をつかんで体を起こさせる。


「こんなみっともない真似をして申し訳ありません。もう、他に——」
「話を聞かせて。とりあえず座って」


彼は私を立たせて、もう一度ソファに座らせてくれた。


「それで?」


一ノ瀬さんが促してくれたので、すべてを正直に打ち明けた。

断られるのはわかっている。
取引してもらえるだけでありがたかったのに、融資なんてとんでもない話だ。

だけど、最後まであがきたかった。

どれだけみじめな思いをしたってかまわない。
峰岸織物の存続の可能性が一パーセントでもあるのなら、あきらめられない。
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