エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
特別なひとりに
その後、ブランピュールとの交渉はトントン拍子に進んだ。

新たにシンプルだからこそ品質の良し悪しが出てしまう真っ白な綿の布も採用となり、ブランピュールで定番となっているブラウスに使用されることまで決まった。


けれども、まだ商品化にまで至っていないので、『峰岸織物は傾きかけている』という噂を否定することもできず、営業はうまくいかない。

一日中歩き回ってもことごとく門前払いの生活はかなり堪える。

無論、ここで立ち止まるつもりはない。
一ノ瀬さんがつないでくれた峰岸織物の伝統は、今度こそ私が守る。


「ふー」


とはいえ、営業先から会社近くの駅まで戻ると、ため息が出てしまった。

歩きすぎたせいで豆がつぶれてしまった片足を引きずるようにして歩き始める。


「峰岸さん」


すると、どこからか私を呼ぶ声がする。


「見つけた。すれ違わなくてよかった」


キョロキョロと辺りを見渡していると……一ノ瀬さんが私に駆け寄ってきた。
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