エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「かしこまりました」


一ノ瀬さんは私を後部座席に乗せたあと、自分も隣に座った。
運転手付きのこんなに立派な車に、私が乗ってもいいの? 

緊張のあまり顔がこわばる。


「先ほど秘書の溝口さんから電話が入りました。もうすぐ会議なのに、社長の電話がつながらないと焦って……」

「わかった。連絡を入れるから、とりあえず峰岸織物に向かってくれ」

「承知しました」


もしかして、あの試作品を私に見せるために、時間がないのに駅まで探しに来てくれたの?

ハッとして彼の顔を見つめると「大丈夫。間に合わせるよ」と言いながら、スマホを手にした。


「一ノ瀬だ。——あぁ、すぐに帰社する。会議の資料には目を通してある。問題ない」


まだこれから会議があるんだ……。

凛々しい彼の声に、胸がときめいてしまう。

私の前ではすこぶる優しく、大企業のトップであることを忘れてしまいそうになるが、部下の前での堂々とした姿を目の当たりにすると、彼への尊敬の念が湧き上がってくる。
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