エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「突然申し訳ありません。弊社の商品サンプルを、どうしても一度見ていただきたくて——」
「君、アポイントもなく失礼だ」


秘書は至極当然のことを口走る。


「はい。わかっております。でも、何度お願いしてもお時間を頂戴できません……」


稲田さんですら門前払い。
社長なんて一生たどりつけそうにない。


「稲田が窓口なはずです。そちらにご連絡ください」


秘書は淡々と語るが、私は食い下がる。
ここで引くわけにはいかない。


「お願いです。せめてサンプルを見てください。品質には自信があるんです! あっ……」


もう一歩踏み出したとき、目の前の小さな段差に気がつかず、足を取られて派手に転んでしまった。

あー、やっちゃった。
それでもこんなチャンスを逃すためにはいかないと、グイッと顔を上げると……。


「大丈夫ですか?」


なんと一ノ瀬社長自ら、私に手を差し伸べてくれている。
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