【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。






なんで私まで。


そういう前に、先輩にズルズルと引きずる様に連れてこられた、体育館の屋上にあるプール。

独特なプールの匂いが、鼻を刺激するけど。


プールは既に水が入ってあって、片付けるところなんてないくらい綺麗。


それもそのはず、水泳部が5月から活動してるんだから当たり前か。


じゃあ、なんでプールの掃除なんて先生に頼まれたんだろう。


「俺の担任、水泳部の顧問だから。
 古くなったビート板捨てて欲しいんだってさ。
 つまりは雑用」


私の心を先読みして、先輩が言う。



「なあ天沢ちゃん、せっかくだし入っちゃう?」


キラキラと太陽の光で輝くプールを見ながら、冗談には聞こえない先輩の声に、驚いて一歩後ろに下がると。


ーーズルッと。

マヌケな私は、プールサイドで足を滑らせ
そのままドボンとプールの中に落ちていく。



その時咄嗟(とっさ)にミア先輩の手を掴んでしまって、ミア先輩も私と一緒に落ちてしまった。


飛び込みで体重がかかった水の中で、私たちは沈んでいく。


ゴボゴボと鼻から息を吐き出したとき。

片目だけを開けた。


ボヤける視線の先、すぐ近くには先輩の顔。


すぐに空気を吸おうと、水の中から顔を出そうとしたとき。


ミア先輩が、私の腕を掴み。


キス、してきた。



「んっ……!?」


突然のことでまったく意味が分からない。


ただ感じるのは
冷たい水の温度に対抗する、ミア先輩の熱を持った唇。


触れて、触れて、揺れた。



浮き上がっていく体。

水の中から顔を出したとき。



制服に水が纏わりついた体で、互いの目が合う。




< 119 / 309 >

この作品をシェア

pagetop