【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
なんで私まで。
そういう前に、先輩にズルズルと引きずる様に連れてこられた、体育館の屋上にあるプール。
独特なプールの匂いが、鼻を刺激するけど。
プールは既に水が入ってあって、片付けるところなんてないくらい綺麗。
それもそのはず、水泳部が5月から活動してるんだから当たり前か。
じゃあ、なんでプールの掃除なんて先生に頼まれたんだろう。
「俺の担任、水泳部の顧問だから。
古くなったビート板捨てて欲しいんだってさ。
つまりは雑用」
私の心を先読みして、先輩が言う。
「なあ天沢ちゃん、せっかくだし入っちゃう?」
キラキラと太陽の光で輝くプールを見ながら、冗談には聞こえない先輩の声に、驚いて一歩後ろに下がると。
ーーズルッと。
マヌケな私は、プールサイドで足を滑らせ
そのままドボンとプールの中に落ちていく。
その時咄嗟にミア先輩の手を掴んでしまって、ミア先輩も私と一緒に落ちてしまった。
飛び込みで体重がかかった水の中で、私たちは沈んでいく。
ゴボゴボと鼻から息を吐き出したとき。
片目だけを開けた。
ボヤける視線の先、すぐ近くには先輩の顔。
すぐに空気を吸おうと、水の中から顔を出そうとしたとき。
ミア先輩が、私の腕を掴み。
キス、してきた。
「んっ……!?」
突然のことでまったく意味が分からない。
ただ感じるのは
冷たい水の温度に対抗する、ミア先輩の熱を持った唇。
触れて、触れて、揺れた。
浮き上がっていく体。
水の中から顔を出したとき。
制服に水が纏わりついた体で、互いの目が合う。