【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
ファーストキスはプールで、しかも許可なくされたことを思い出し、ボッと顔が熱くなる。
あれは確かにひどかった。
まさか水中でファーストキスを奪われるなんて……誰も思わないよ。
それでもそんな先輩と、今こうして恋人と言う名の関係であるから不思議なんだよね……。
「い……いい!」
「そんな遠慮しなくたっていいのに、恥ずかしがり屋なのは変わらないんだね」
「……っ」
「せっかく、俺の彼ーー……」
「わあーーーーーー!!」
"彼女"
そう言おうとした先輩の口に、慌てて手を押し付けた。
開いている引き戸の隙間から、女の先輩達の視線がチクチクと痛くて。
先輩の腕を掴んで引っ張り、教室から離れる。
「なーに天沢ちゃん、俺のこと拐って。
そんなに俺のこと独り占めしたいの?」
呑気に言う先輩を無視して。
ピタリと足を止めた場所は、屋上に上がるためだけに存在している階段。
ここは薄暗くて、人通りも少ないし。
内緒話するなら、最適な場所だと思う。