【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
ーーシャッと、勢いよく試着室のカーテンが閉められた。
閉まる前に、カーテンの隙間から見えた、先輩の呆れた顔。
あんな顔されるなんて、思ってもみなかったから。
もしかして嫌われたんじゃないかって、怖くなる。
「……バカだな、私」
明日は海デートなのに。
それなのに、その前の日に雰囲気を壊すってどうなんだろう。
もっと自分に合った、あんまり目立たない水着にすればよかったって後悔。
水着を脱いで、目にうっすら浮かんできた涙を腕で拭き、試着室から出ようとすると。
「うわっ!?」
カーテンの隙間から、ーーグイッと手が伸びてきて、私の目の前で止まるから
驚いて心臓が跳ね上がる。
「天沢ちゃん、これ着な」
「……へっ?」
「いいから」
その手の正体は、もちろんミア先輩で。
先輩が手に持っている水着を、受けとる。
受け取った水着を広げてちゃんと見てみると
露出の少ない、色は黒の控えめなフレアワンピース水着だった。