【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
先輩は私のこと知らないんだし。
好きになったのは私なんだから、自分から行動を起こさなければ何も始まらない。
生まれたての小鹿の様に、ガクガクと震える足で先輩のシューズロッカーの前まで来た。
「届け……っ、この思い!!」
夕方のオレンジ色の光と一緒に、持っていたラブレターを先輩のシューズロッカーに入れようとした瞬間。
「このご時世にラブレターって、なかなか見ないよね。」
後ろから聞こえてきた声に、肩が飛んでしまいそうなほど驚く。
あれほど誰かいないか確認したのに。
一瞬で顔が青ざめる。
私はロボットの様に、ギギギと硬くなった体を曲げて振り返った。
「あ、あ、」
「ん?どうしたの。いいよ、続けなよ。
そのラブレターの行く末、見届けてあげる」
口をパクパクとさせている私とは違って、男の人は声がとても愉快そうなのに、顔が全然笑っていない。
「あっ、そのラブレター。もしかして入れるところ間違えてる?」
「……へっ?」
「本当はこことか?」
男はヌッと綺麗な手を私の横顔スレスレで伸ばすと。
先輩のシューズロッカーの隣を開け、中を見せてくる。