【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。





先輩は私のこと知らないんだし。
好きになったのは私なんだから、自分から行動を起こさなければ何も始まらない。



生まれたての小鹿の様に、ガクガクと震える足で先輩のシューズロッカーの前まで来た。



「届け……っ、この思い!!」


夕方のオレンジ色の光と一緒に、持っていたラブレターを先輩のシューズロッカーに入れようとした瞬間。



「このご時世にラブレターって、なかなか見ないよね。」


後ろから聞こえてきた声に、肩が飛んでしまいそうなほど驚く。


あれほど誰かいないか確認したのに。


一瞬で顔が青ざめる。


私はロボットの様に、ギギギと硬くなった体を曲げて振り返った。



「あ、あ、」


「ん?どうしたの。いいよ、続けなよ。
 そのラブレターの行く末、見届けてあげる」



口をパクパクとさせている私とは違って、男の人は声がとても愉快(ゆかい)そうなのに、顔が全然笑っていない。




「あっ、そのラブレター。もしかして入れるところ間違えてる?」


「……へっ?」


「本当はこことか?」


男はヌッと綺麗な手を私の横顔スレスレで伸ばすと。

先輩のシューズロッカーの隣を開け、中を見せてくる。




< 3 / 309 >

この作品をシェア

pagetop