【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
「寝不足なら、もうちょっと早めに寝ればいいじゃないですか」
「んー、無理だね」
「どうして?」
「だって女の子が朝まで離してくれないし?」
聞かなければよかったなんて。
今更思ってしまうのは、時を巻き戻せない証拠。
3週間前、好きだった斉藤先輩に悪口を言われて
傷ついていたところを
私はこの変態先輩に助けてもらった。
正直見直した。
だって先輩、もっとチャラい人だと思っていたから。
だけどやっぱり。
「女の子はいいねー、可愛いし柔らかいし、それに素直だし」
「……」
「あっ、天沢ちゃんは全然素直じゃないよね?
もっと他の子見習えば?」
「……先輩ってほんっと最低」
助けてもらった時。
不覚にも、ちょっと……ほんのちょっとだけ
この男にときめいてしまった自分が憎い。
シワのない先輩の真っ白なシャツに手形をつけようと、バシッと背中を叩いて自分の教室に向かって走る。
「ガキかよ、天沢ちゃん」と、逃げていく私の後ろ姿を見つめながら、ミア先輩がそう呟いていたことなんて知る由もない。