【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
ただジッと黙って、数分の間無言でいると。
下からミア先輩の手が伸びてきて、頬を掴まれる。
その手に力を入れるミア先輩のせいで、私の唇はタコの様に突き出して、きっとマヌケ顔だ。
「なにしゅるんでしゅか」
なにするんですか。そう言いたいのに上手く言えなくて。
それでも笑っているミア先輩を見て、伝わってはいるんだと分かる。
「天沢ちゃんって彼氏いたことあるの?」
「……」
「無言ってことは、ないってことか」
意地悪な質問だよ。
恋愛に余裕がないこと、斉藤先輩の件で見てて分かったでしょ?
思えばただ、好きな人がほしかっただけなのもしれない。
だから顔と雰囲気がタイプだった斉藤先輩を好きになるのが手っ取り早かっただけなのかも……。
でもまあ、一目惚れだとしても、好きは好きだったけどね。
あんな最低な先輩でも。