【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
ツンッと、タカシが私のおでこをつついてきた。
おいタカシ、しっかりしろタカシ。
私は別にタカシなんか好きじゃないんだよ。
そもそも居たくてここに居る訳じゃないんだよ。
人見知りで恋愛初心者の私には、合コンは少し……早すぎたみたい。
「あっ、の。ちょっとお手洗い」
「いってらー」
立ち上がり、部屋から出ようとした時。
なんだかんだ愛されキャラなのかよく分からないタカシは
私を口説いていたにも関わらず、数秒もしないうちにマイクを持って熱唱し始める謎多き男だ。
……このまま帰ろうかな。
でも沈黙を恐れて、オレンジジュースを飲みすぎたせいで、本当にお手洗いには行きたいし。
鞄だって部屋に置いてきたままだ。
とりあえずお手洗いに行って、トイレの個室で考えてはみたけど。
やっぱりタカシから逃げきる方法が思い付かない。
鏡を見つめ、手を洗い、少し跳ねている髪を整えて時間を潰す。
けどいつまでもトイレに居るわけにもいかないから、潔く出ることにした。