【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
「なに百面相してるの天沢ちゃん。行くよ」
こういう時に限って、私の気持ちなんか察してくれないミア先輩は乙女心が分かっていない。
「はーい」と軽く返事をして教室から出る。
学校から出て先輩の隣を歩き、ついていくと。
連れてこられた場所は、遊具が置かれていない広々とした公園。
茶色いベンチが所々にあって、真ん中には噴水がある。
その噴水から、蕾から花を咲かせた様に水が噴出し始める。
ベンチに座る前に、噴水近くにあるクレープを販売しているキッチンカーで。
ミア先輩がクレープを買ってくれた。
「ミア先輩……っ、お金払います」
「なーに色気ないこと言っちゃてんの。
いいから食べな」
渡されたクレープを一口食べると、口の中にいちごの香りと甘さが広がって幸せ。
そんな私を隣でジッと見つめるミア先輩。
「あんまり見られると、食べづらいです」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。
食べてる甘沢ちゃんも可愛いね。
口をパクパクさせて、金魚みたいだよ」
金魚って……確かに可愛いけど。
なんだか素直に喜べない。
この人、まともに人を褒めようとは思わないのか。