うさみみ短編集
「俺、知ってんだからな。お前、いっつもピーマン残してるだろう?」
「の、残してないよ」








私の言葉はあまりに小さく上ずっていたので、相手に届くか届かないかの所で宙に舞って消える。







「は?残してるだろ。俺、見たんだからな。お前がティッシュにピーマン包んでる所。先生に言ってやるからな」







「や、やめて…やめてよ、ツトム君」







ドクドクと嫌な音が体中から聞こえてくる気がした、相手の言葉に目の前が揺らいでクラクラして、気持ち悪くなって吐きそうになる。








それこそ、大嫌いなピーマンを食べる時の私の心境の様だと感じながらも、ツトム君と言う苦手分野からは逃れる事が出来ない。








「だったら、今日は食べるんだろうな?」
「う…う」






私は少し大きなツトム君の声にきゅうっと胸が締め付けられるようになって、下を向いたまま黙り込んでしまう。








ツトム君は今、こんな私をどんな目で見ているのだろう?そう思ったら指先が震えて、声も出なくて、私はぎゅっと目を閉じた。








「食べなかったら、そのプリン貰うからな。後、先生にも言うからな」









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