うさみみ短編集
ツトム君の指先が私の牛乳瓶の横にある、市販のプリンに向けられる。





唯一月に二度出れば良い方であるプリン。私はそれを暫く見つめて残像が残るのではと思われる程の速さで首を横に振る。






「い、嫌!」
「だったら、食べろよ」
「う…うう」








神様、今にも首根っこの急所を噛み砕かれそうな私を、どうして救って下さらないのか?と自分の胸中で訴えるが、そんな物は何の意味も無く、ましてや隣に居るぎらぎらとある種の欲望を煮えたぎらせた、このツトム君に私を護る神が何が出来るかと言えば、成すすべは無い。








無力、皆無。そんな言葉がグルグルと脳内でループを描くように回る。
やがて皆席を立って皿を片付け、校庭へと続く廊下を走っていく姿がちらほらと見受けられ、そのちらほらは段々と教室に残っている人数へと変わる。








私はまだ丁寧に皿の隅に避けられたピーマンを見下ろしていた。目頭が熱を帯びてくるのを感じ、私の視界はぼやけて霞んでくる。







「おい、ツトム」
びくっと私はその名前に反応する様に肩を震わせた。
「何だよ、ばーっか」







ツトム君の声が隣で響く。私に向けられた言葉では無いのに、酷くその一言一言が自分の本能に拒否反応を示す。







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