囚われの王子様。
恋がうまく出来ない私、恋をしない彼。


ーーーポーン。


ようやくエンジンがかかり始めた午前10時。

隣の席の後輩の神崎さんがあげてくれた、経理に新しく入る派遣社員さんの書類をチェックしていると、パソコン画面の右下にメールを受信したと通知が表示された。


誰からだろう。


「あ」


予想してなかった差出人の名前に思わず間抜けな声がでてしまう。


「どうしました?香子さん」

「ううん、なんでもない」


突然の間の抜けた声に、神崎さんが反応するけど何事も無かったかのように首を振った。

その返事に、パソコンへと目線を戻した神崎さんを横目で確認しつつ、メールを開封する。



『今日の昼、空いてたら非常階段で』



シンプルで素っ気ないそのメールの差出人は。


ーー『to.須藤 司 (海事)』


やっぱり須藤さんで。

< 41 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop