囚われの王子様。
須藤さんと私の関係ってなんだか特殊で。
会社の同僚と言っても、仕事の話をするほど接点があるわけでもないし、ましてやプライベートで親しいわけじゃない。
なのに、なぜか彼女のフリをしたもんだから、須藤さんと妙な関わりができてしまった。
今だって、須藤さんの車で灯油を買いに行っているという何だかおかしな状況なわけで。
要するに、須藤さんとの接し方がよく分からない。
なんで私、今須藤さんの車の助手席に座ってるんだろう、とか考え始めたら他愛もない世間話さえもうまく出来なくなって。
ああ、また私考え過ぎて混乱してきてる…。昔はもっと、感覚で行動できたのにな。
最近はなんだか妙にあれこれ考えてしまって。これは、恋愛もしかり。
「あ、ここを右です」
なんて、考えていると目指していたガソリンスタンドの大きな看板が見えてきた。