囚われの王子様。
そのお金と時間を自分のために使うようになった。好きなものを食べ、欲しいものを買う。
そうしているうちに、ひとりでいる時間が一番楽しいということに気づいてしまったのだ。残念なことに。
結婚資金としての貯金を老後の資金に切り替えた。
焦って貯めなくてもよくなったから、若干余裕がある生活を送れている。
マンションも少しだけだけど、グレードアップもして。
おひとりさまを満喫してしまっている私の前に、王子様なんて来るわけないよね。
なんて考えていると、仕事に戻ったはずの神崎さんが『あ!』と声を上げ再び私に目を向けた。
「王子様と言えば!帰ってきますね、須藤 司」
興奮したようにそう言った。