囚われの王子様。





土曜日。私は自分のマンションから割と近くにある実家へと帰って来ていた。


電車で数十分の距離にある実家には、月に1、2回ほどは戻っている。

今日も、田舎のおばあちゃん家からお餅が届いたということでおすそ分けをもらいに来たところ。


実家は居心地が良くて、ゆっくりして行きたいけど。


そろそろお母さんの、『結婚は?』『いい人居ないの?』攻撃が始まりそうだ。


そうなる前にここを出ないと。

ジップロックいっぱいに入ったお餅をバックにしまいもう帰ろうとしていたとき、


「香子、悪いんだけど将生(まさき)にこれ届けてくれない?」


そう言って母が差し出したのは弟の着替え。


「あの子、今日はフットサルの試合に行ってるんだけど着替え忘れたんだって」

「普通、着替え忘れる?」

「しょうがないじゃない。あの子、馬鹿なんだから」


しれっとそう言うお母さんは、『あんたもどうせ暇でしょう』と付け加え、荷物を押し付けて来た。


こども達になかなか辛辣だな、お母さん。

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