囚われの王子様。


実家を出ると、いつも降りるマンションの最寄駅より3駅前で降り、試合が行われているらしい運動公園まで歩く。


少し歳の離れた弟は今大学生で、フットサルのサークルに入っている。


いいな、大学生か。

自分の学生生活を思い出したらなんだか戻りたくなってきた。

あの頃は、『いいね、大学生。戻りたい!』などと大人から言われても、学生は学生なりに大変なのに、なんて思ってたけど。

働きだすと分かる。あの頃がどんなに気楽な生活を送っていたか。


そんなことを思いながら歩いていると、どんどんとコートが見えて来た。

よし、ここら辺だな。


弟に、着いたとLINEをしようとしたとき、


「ちょっと待ってよ、須藤君!」


と、女の人の甲高い声が耳を貫いた。

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