そのアトリエは溺愛の檻
条件があると告げられた瞬間、部長の顔が少し強張ったようだったけど、すぐに元の笑顔に戻った。


「はい。それは全く構いません。ご希望に沿うようにしたいと考えています」

「それは良かった。僕は人付き合いがあまり得意な方だとは言えないので、できればよく知っている人がいいんです。なので、彼女を担当にお願いします」


そう言いながら、美しく微笑んで私を見る。

「雨宮ですか?」

「はい、実は知り合いなんです、雨宮さんと。ね?」


微笑んでいるようで目が笑っていない。口元だけ弧を描いている。そんな彼を見て、私は目眩がした。


全然知りません。ただ、酔った勢いで寝てしまっただけで、シゲアキって名前以外は全然知りませんから!

っていうかシゲアキも部長に言われて初めて私の名前が雨宮って名前知ったんじゃないの!?


「なんだ、雨宮さん、アキさんのこと知っていたのなら言ってくれたら良かったのに」


アキ? シゲアキじゃなくて?

え、アキって待って、この人ってもしかして……。

あの有名なフォトグラファーのアキなの?
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