そのアトリエは溺愛の檻
確かに以前から社長がアキの写真をカレンダーに使いたいと言っていたのは聞いたことがあったけど。

でも人気広告や有名アーティストのCDジャケットの写真を撮るくらいの人だし、雑誌でも名前をよく見るし、いくらなんでもさすがにそれは無理だろうと思っていた。

まさか本当に依頼していたとは驚きだ。創業50周年の本気を見た気がした。


というか、つまり先週見た写真展、アキの写真だったってことだよね。雑誌で見かける作品と全然イメージが違ってわからなかった。

アキの写真ってもっと目を惹くコントラストの強いイメージというか。先週見たのは淡い色で静かな雰囲気の写真ばかりだった。


私が考え込んでいると、アキが口を開く。


「知り合ったのは無名の頃でしたし、僕も忙しくて全然連絡を取ってなかったので知り合いって言い出しにくかったのかもしれないですね」

「そういうことでしたか」


有る事無い事ペラペラとよく出て来るものだ。確かに、知り合ったのは有名フォトグラファーのアキとしてでなく、小さな個展を開くようなシゲアキという男だったけれど。
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