そのアトリエは溺愛の檻
「彼女が担当なら、僕も安心してこの仕事をお受けできるのですが……」


目的は何だろう。何も言わずに逃げ帰ったことを怒っているのだろうか。

確かに悪かったけど、でもこんなのは反則だ。こんな綺麗な顔してるのに、やり方が汚い。

だって、私に選択肢がないのだから。


どんなに心の中で怒っても、部長が笑顔でこちらを見ているこの状況で、誰が断れるのだろうか。


「雨宮さん、頼んだよ」

「はい。わかりました」


それではこのまま一緒にとアキに促され、部長の隣に座らされてからは、トントン拍子に話が進んでしまった。


どうしてこんなことになってしまったのかと思っても、もう遅い。カレンダーとなると部長命令どころか社長命令になる。しがない会社員なので、これはもう引き受けるしかないのだ。


普段は座ることのない応接室の椅子はふかふかなのに、決して居心地の良いものに感じられなかった。
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