そのアトリエは溺愛の檻


はぁ。彼が帰った後、自席に戻って、思わず大きなため息が漏れた。

なんでこんなことになったのか。担当って何よ。こんな展開望んでないのに。

水曜日は部長もいないし、きっと二人っきりで会うんだよね。となると、金曜のことを避けて通ることはできないはずだ。

あぁもう、無理! 嫌だよぉ。
私も十分反省してるから、もう許してほしい。



そうは思いながらも、訪問先であるアトリエは一体どこにあるのかと思い、改めてカードを見て驚いた。

ここって確か……。

気になって調べると、アトリエの住所は、あのレンタルスペースのあるデザイナーズマンションの最上階だった。


何これ、自分のマンションから近すぎて笑えない。


でも、本当にどうして彼はこんなこと……。

そのとき、満足そうな顔をした部長がこちらにやって来た。


「雨宮さんがいてくれて良かった良かった」

「いえ、偶然ですから」

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