そのアトリエは溺愛の檻
フラッシュバックしたあの夜の出来事を頭の中から消すように小さく頭を振った。

だめだめだめ、今仕事中なのに何考えてるんだろう。

「すみません、あの時のことは、えっと、忘れていただけると……」

「それは無理」

そう即答した彼は立ち上がり、部屋の奥へ歩いていく。

「あの……?」

思わず私も立ち上がると、彼はすぐにこちらに戻って来て、一枚のモノクロ写真を見せた。


「こんなに良い出来だから忘れられない」

「何これ!」

それは、ソファーで眠る私の写真だった。

ブランケットと長い黒髪のおかげで肌はある程度隠れているものの、肩から腕がしっかりと見えていて、何も身につけていないことがわかってしまう。

とっさに写真を奪おうとしたけど、手の届かない高さに掲げられてしまった。身長があるほうなのでこういう時に手が届かないなんてあまりないのに。こんな時に限ってどうして。


「何って、じっくり知ったから撮れた写真」

「勝手に撮るなんて」

「人聞きが悪い。撮っていいって言っただろ。あぁ、絶頂迎えた後だったらから覚えてない?」
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