そのアトリエは溺愛の檻
「すみません。でも、あの、私はアキさんに写真を撮ってもらえるような容姿でもないですし」

「背、170cm近くあるよね」

「169ですけど」

「うん。髪も長いのに毛先まで綺麗だし、その黒髪と細長い手脚が撮りたいイメージにすごく合うんだ。この写真撮って、絶対にこれだって思った。

起きたらいなくなって参ったけど、夜に倒れたバッグから見えてた社員証を思い出して、そういえば前に倉橋からメール来てたなって思い出してすぐに返信したんだ。
さすがに月曜にあんな風に再会できるとは思ってなかったけど。どうやら運も俺に味方してくれたらしい」



犯人は社員証か。ネックストラップにも大きく社名が入っているし、ちらっと見えただけでも分かるはずだ。

よく財布を出そうとした時に落としそうになっていたから気をつけていたのに。もっと奥にしまっておくべきだった。今更言っても遅いけど。


「でも、アキさんに自分を撮ってもらいたいと思ってる人はプロのモデルさんの中にもいらっしゃるはずですし、私よりスタイルも良くて綺麗な髪の人がたくさんいると思いますが」

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