そのアトリエは溺愛の檻
「抵抗しない。はい、リラックスして」

「あの、こんなふうに抱きしめられたらもっと緊張するんですけど」


リラックスさせようとしてるならこれは逆効果だと、なるべく冷静を装って話しかける。自覚できるくらい心臓がドクドクと速く動いている。それが気づかれないうちに離れたい。


「撮影中は口答え禁止ね」

「待っ、んん」


意地悪そうに笑った顔が近づいてきて、口が塞がれる。


「ん、やだ、んん……」


挨拶程度のキスではない。このままベッドになだれ込みそうな、全てを求めるような激しいキスだ。だんだん何も考えられなくなって、手に力も入らなくなって、キスを受け入れていた。

「ほら、素直で可愛くなった。そのまま俺を見てて」


耳元で囁き声が聞こえたあと、ふわっと身体が離れ、彼はカメラのほうに戻っていく。


彼に触れられた部分が熱くて、耳元もくすぐったい。

そんな形容しがたい雰囲気で撮影に戻るものだから、自分がどんな顔をしているのかわからないし、身体に力は入らないし、それでもお構いなしにバシャバシャと写真が撮られていくので、ただ彼を見つめるしかできなかった。
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