そのアトリエは溺愛の檻
どんな表情で映っているのかと緊張していたけど、出来上がったモノクロ写真には、なんとも言えない目で彼を見据えている自分がいた。

ポーズを取るわけでもなくただ座っているだけで、モデルとは決して言えない素人なのに、目がひとつのものを求めているのを感じる。

物欲しそうな目というのはこういうものなのか。とても強くて、力がある。


そしてそんな風に感情をさらけ出して彼を欲しがった顔をしてしまう自分がたまらなく恥ずかしかった。




「あの、どうして撮影中あんなことするんですか?」

撮影を終え、元の服に着替えて部屋に戻ると、スパークリングワインが用意されていて、彼にグラスを手渡された。


「撮影が無事に終了したことを祝して、乾杯」

「じゃあ、一杯だけ」

最初の夜のこともあるし、彼の前でお酒は控えたいところだけど、注がれたものを断るのは悪いし、打ち上げのようなものだから、この一杯だけいただこうとグラスを鳴らす。


「あ、おいしい」

「口に合ってよかった。で、あんなことって?」

「あの……、抱きしめたり、キスしたりとか、いろんなスキンシップ。ああいうのこの世界では普通なんですか?」
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