そのアトリエは溺愛の檻
確かにあの日は甘い言葉に喜べるくらいに無防備だった。

背が高くて冷たそうとかクールと言われることが多く、甘い言葉に慣れていなかった私は、去年甘い言葉のシャワーに浮かれてしまい、少し痛いめに遭った。だからそれ以来、危なそうだと思ったら傘をさして自分を守るようにしていた。一年間恋から遠ざかっていたのも、それが原因だったりする。

だけどあの日は酔っていたのと、きれいな写真を見て心が満たされていたのとで、何かを気にする余裕がなくて、目の前にいた良い男のことしか考えられなかった。



「そうですね、お酒は人をダメにするので今日はこれで失礼しますね。ご馳走様でした」

「そう来るか。強気なのも似合うからいいけど。撮影では素直な百音を見せてもらうよ。あと今日のワンピースは百音のために選んだプレゼントだから持って帰ってね。また次回は別の衣装を準備しておくよ」

「え、次回って?」

「ん? まさか今日ので終わりだとでも思ってないよね」

「でもさっき、撮影が無事に終了したから乾杯って……」

「うん、第一回目の撮影が」

「そんな」


力が抜け、壁に寄りかかりそうになった。
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