そのアトリエは溺愛の檻
「その表情いいな。百音は落ち込んだ姿も可愛いね。今撮っていい?」

「もうダメです。いろいろと……」

「大丈夫。それに次は今回よりもっと可愛く撮ってあげるから楽しみにしてて」


まだこの先もこんなに恥ずかしいことが続くのかと思うと頭が痛い。甘い言葉やスキンシップに何も感じないようにするなんて、とても大変なのに。魅力というものを自由自在に操れる人の前で、いつまで防御壁が持ち堪えられるか心配になる。


「これからもよろしくね」


手の甲にキスをして私を見上げた重秋はおとぎ話の王子様みたいに美しかった。その優雅な所作も、私を捕らえる視線も、魅惑的な表情も、全てに酔いそうだ。

本当にこの人は、いったいどれだけ魅力の引き出しがあるのだろうかと恐ろしくなった。

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