そのアトリエは溺愛の檻
訳ありな関係の説明
六月も下旬に差し掛かり、五回目の撮影が来週末と迫ってきていた。

撮影にも慣れてきたし、緊張はだいぶしなくなってきているけど、気を抜くと心まで持っていかれそうで危険なのは変わらない。


カレンダーのほうは順調で、もう撮影に入っていると連絡があった。

こんなに身体と心を消耗して業務外のカレンダーの仕事に取り組んでいるのだから、早く完成して安心させてほしい。撮影中の重秋が真剣なことはよく知っているから、それは大丈夫だと思うけど。



今日は金曜日ということで、奥田さんと営業の賢木くんとよく行く個室の居酒屋に飲みに行くことになっている。

ひとつ年上の奥田さんと私と同期の賢木くんは何かとチームになることが多くて、三月の案件もこのメンバーを中心に動いていた。年齢が近いこともあって仲が良く、以前からよく食事をしていたけど、今日は賢木くんが営業部の四半期賞を獲ったお祝いでの集まりだった。


「本当は五月中にお祝いしたかったのに、こんなに遅くなってごめんね。金曜は直帰だったりしてなかなか合わなくて」
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